ちょっと恥ずかしい話なんですが、僕には大好きな従兄弟のお兄ちゃんがいました。
僕より3つ年上で、おばあちゃんちに学校が終わって帰ると、そのお兄ちゃんも学校から帰ってくるんで、いつも一緒に遊んでたんです。
兄弟みたいに育ってたんですよね。
だから自覚のないままそのお兄ちゃんの影響を受けて、ファッションも勉強も人間関係も、いろんなことを教わって育ちました。今思えばほとんど僕の憧れのお兄ちゃんみたいな存在でしたね。
3つ年上だから、自分よりも少しだけ大人で、ちょっと憧れてるような。友達がたくさんいて、いいやつで、ご両親もいい人。そのお兄ちゃんにはお姉ちゃんもいて、仲が良かったんです。
ひるがえって僕はというと…
僕は片親で、お母さんしかいなくて。お姉ちゃんもいましたけど、ほとんど口もきかないぐらい仲が悪くて。性格も昔はちょっときつくて、いつも人に威張ってた。
友達は結構多い方だったけど、それ以外は…なんかそのお兄ちゃんの方が、性格もいいし、ご両親2人ともいるし、家族仲もいいし、おじいちゃんとおばあちゃんとも一緒に住んでるし。本当にいいやつでした。
そんなお兄ちゃんが、僕が15歳になる直前、19歳の時に突然亡くなったんです。バイクの事故でした。
事故の前の日も一緒に遊んでて。
その当時お兄ちゃんは社会人で、僕は高校生。
時間帯も合わなかったし、お兄ちゃんはすぐ彼女に会いに遊びに行っちゃうんで、あんまり長時間一緒に遊ぶことはなかったんですけど、たまに一緒に遊んだり、遊びに連れて行ってくれたりして。
ほんと突然だったんで、おばあちゃんから電話で聞いて、急いで病院に行きました。霊安室に。
すぐにお兄ちゃんといつも一緒に遊んでた仲間たちが駆けつけてきて。
もちろんお兄ちゃんの彼女も来て…
呆然としてる人、号泣してる人、何が起きてるのかわからないという感じで混乱してる友達もいたり…。
そのお兄ちゃんめちゃくちゃ人望があったので、葬儀の時も、葬儀場に本当にたくさんの友達が来てて。
同級生とか、もう本当にたくさん来てて。
200~300人とかは来てたと思うんだけど。
本当に人望があるお兄ちゃんでした。
かたや僕はその頃、もう母も亡くなってて、仲の悪いお姉ちゃんとは相変わらず会わなくなってたし、おじいちゃんおばあちゃんの家で居候させてもらってる、お荷物みたいな状態だったんですよね。食わせてもらってるって感じで。
つまり僕は自分のことを、そんなに価値のある人間だとは思ってなかったんです、その頃。
自分はそんなに価値がないと思ってたし、なんとか食わしてもらってるようなやつで、お荷物で。
親戚から見たら別に嫌われたりはしてなかったけど、別にいてもいなくてもどっちでもいいような存在だなと思ってて。(だれかにそう言われたわけじゃなくて僕が勝手に思ってただけなんだけど)
かたやそのお兄ちゃんの方は、おばあちゃんちの長男で、たった一人の男の子で、まあまあイケメンで、彼女もいて、友達もめちゃくちゃいて、人望があって、仕事も一生懸命やってるし、家族仲もいいし。めちゃくちゃ価値がある人だなって思ってました。
だからそのお兄ちゃんが亡くなった時、僕はすごい悲しかったし、悲しかった上になんかもう…
なんで自分なんかが生きてて、なんでそのお兄ちゃんが死ななければならなかったんだろうってことをすごい考えるようになったんですね。
明らかに自分より価値があって、もしどっちか死ぬんだったら自分が死んだ方がいいだろうってことを本気で思ってました。
神様に「なんで俺じゃなくてお兄ちゃんを殺したんだ、選ぶんだったら俺だろう」ってことを何度も何度も言ってました。
俺みたいな別に何にもない、親もいない、親戚のお荷物で。
別に友達だって、当時お兄ちゃんみたいにはそんなに強いつながりがある友達が多いわけでもなし。
比べてみたら俺の方が価値がないと思ったんで。
全然価値ないじゃん、お荷物だから。
(選ぶなら俺を選べよ)というようなことをすっごい考えるようになりました。
多分その頃から、僕は自分に無価値感みたいなものが芽生えたのかもしれない。
何のために生きてんのかとか、なんで自分は価値がないとか、そんなことを考えるようになったのがこの頃。
そういう人って結構世の中にいるんじゃないかな?
自分と誰かを比べて、自分は価値がないと思ったりとか、そういう気持ちになっちゃってる人。
僕の場合はそのいとこのお兄ちゃんだったけど、
例えば自分の兄弟と比べてみたりとか、
仲のいい友達と比べてみたりとか、
なんかどっかの有名人と比べてみたりとか。
いろんな人と比較をして、なんか知らんけど自分の方が価値がないと思ったり。
SNSでいけてる人を見つけては、自分と比較してみたり。
でも考えてみたら…
お兄ちゃんはすごい価値があったと思います、確かに。
僕はそのお兄ちゃん大好きだったんで、大好きだったってことで、もうそれで終わり。
それはそれ。お兄ちゃんはお兄ちゃん。
じゃあ自分は価値がなかったのかなって考えた時に、その当時の環境を見ても、お兄ちゃんほど人望はないけれど、でも自分を慕ってくれてる友達はいたし、仲の良い友達はいたし、おじいちゃんやおばあちゃんとか、自分がもし亡くなったら同じように悲しんでくれる人はいたんだろうし。
その当時のことを振り返っても、自分が死んじゃったら、それなりの人が悲しんだりとか、寂しがってくれたりとかしたんじゃないかなって思います。
お兄ちゃんほどじゃなかったとしても。
別に人がどんだけ悲しむかとか、何人悲しむかとかそういうところで測りたいわけじゃないけど、何が言いたいかっていうと…
お兄ちゃんは価値があったけど、自分にも価値があったじゃないかってことですね。
そんな無価値感なんて、ただの幻想にすぎなかった。
価値があるから生まれてきてるし、今までいろんな人と出会って、人を喜ばせたり、仕事で業績を出したり、プライベートで楽しい環境を作ったりとか、家族を築いたりとか。そういうことって一つ一つ価値なわけですよ。
それにもかかわらず、だれかと比べて自分の価値を認めないなんていうのは、マジで無意味。
天から与えられた命、才能だったり環境だったり、そういうものを粗末にしてる傲慢な振る舞いだなとすら今は思います。
お兄ちゃん死んじゃって、その時僕はすごく自分とお兄ちゃんを比べたけれども、そんなことする必要ないですよね。
お兄ちゃんは死んだ。ただその現実があるだけです。
そしてその現実っていうのは僕の価値とは何の関係もない。
同じように、だれかと自分を比べる必要も本来ない。
あの人はあの人。ただそれだけ。
あの人の現実は自分の価値とは何の関係もない。
自分は自分で、すごく価値のある人生を歩んでいけばそれでいいんだってことです。
それでは!
