前回、こんな話をしました。
体の中には「妊娠していい状況かどうか」を判断する門番がいる。脳が”脅威”を感じ取ると、その門番はゲートを閉じてしまう、と。
じゃあ、その”脅威”って、いったい何なのか?
生理が来ること。
治療がうまくいかないこと。
友だちからの妊娠報告。
そう、まさにこれらです。これが脅威になっている。
でも、ここからが大事なところなんですが。
同じ出来事でも、脅威になる人と、ならない人がいるんです。
同じように生理が来て、崩れ落ちてしまう人と、「あ、来たか」で済む人がいる。
では、この差は、どこから生まれるのか?
出来事そのものではありませんよね。
そうではなくて、その出来事に、自分がどんな意味をつけているか。
ここです。
(ん?どういうこと?)
そう思ったかもしれません。
そして、ここが今日の一番大事なところなので、じっくりお伝えしていきます。
今日お話しするのは、この5つです。
・出来事を”脅威”に変えているのは、自分の「意味付け」だということ
・脅威には2種類あって、多くの人は片方にしか気づいていないということ
・門番を開けるには、2つの方向からアプローチする必要があること
・僕が「体から始める」ことを強くおすすめする、3つの理由
・そして、自己流でやると”事故る”ということ
それから、最初にお伝えしておきたいことがあります。
それが、ポジティブシンキングは、絶対にやめてください、という事です。
「前向きに考えよう」
「感謝しよう」
「起きたことには意味がある」
こういうの、不妊治療をしていると、いろんなところで言われますよね。
でも、これ、僕は本当に危険だと思っています。
なぜなら、たしかに、このようなポジティブシンキングは、一時的にはうまくいっているように感じます。
だから、スポーツの試合のような、長くても数時間で終わるような、短期決戦なら有効ではあります。
でも、不妊となると、数時間では終わりません。
それなのにポジティブシンキングをやってしまうと、やればやるほど苦しくなってしまうからです。
そして、しまいには、自分を壊す方向に向かっていくことさえあるのです。
理由は本文で詳しくお伝えしますが、ひとことで言えば、内なる自分を無視する行為だからです。
でも、ご安心ください。
そんなことにならないために、今日お伝えするのは、その真逆のアプローチです。
では、早速、始めていきましょう。
■ 出来事を”脅威”に変えているのは、自分の「意味付け」
まず、こんな場面を想像してみてください。
同じクリニックに通う、二人の女性がいます。
二人とも、今日、生理が来ました。
治療がまた振り出しに戻った、という意味です。
一人は、その場に崩れ落ちて、しばらく動けなくなります。
もう一人は、「あー、来たか」と小さくため息をついて、次の予定を確認します。
二人とも、起きた出来事は同じ、生理が来た、です。
なのに、体に起きている反応は、まったく違います。
これ、なぜでしょうか?
出来事がまったく同じなら、反応も同じになりそうなものですよね。でも、実際にはそうならない。
答えはシンプルに、体にとっての本当の脅威は、「生理が来たこと」そのものではなく、その出来事に、自分がどんな意味をつけているか、だからです。
そして、ここが「授かる力」を上げるための分かれ道なんです。
崩れ落ちてしまった女性は、たとえばこう思っているかもしれません。
「また、私はダメだった」
「産めない私には、価値がない」
一方、「あー、来たか」で済んだ女性は、こう思っているかもしれません。
「今回はタイミングが合わなかったな」
「じゃあ、次はどうしようか」
起きた出来事は同じ。でも、乗っている意味がまるで違いますよね。
そして、体はこの「意味」のほうに反応します。
前回お伝えした門番のことを、思い出してください。
門番は、「今は安全か、危険か」を判断して、ゲートを開け閉めするんでしたよね。
では、「産めない私には価値がない」
これ、門番からするとどうでしょうか?
とんでもない脅威ですよね。
だって、自分の存在価値そのものが脅かされているわけですから。命の危険と同じレベルで、体は反応します。
一方、「今回はタイミングが合わなかった」
これは、単なる事実の確認です。脅威でも何でもありません。
つまり、同じ「生理が来た」という出来事が、意味付け一つで、天と地ほど違う信号として、体に送られているということです。
ここ、大事なポイントなので、もう少しお伝えさせてください。
出来事そのものは、コントロールできません。
生理は来ますし、うまくいかないときはあります。
でも、それに乗せる意味のほうは、実は書き換えることができるんです。
僕は、ここに大きな希望があると思っています。
■ 脅威には、2種類ある
さて、ここからがもっと重要な話です。
不妊治療をしている方が抱えている脅威。
実はこれ、まったく方向の違う2種類に分かれます。
ひとつは、「授かれないこと」への脅威。
毎月訪れる絶望。
焦り。
誰にも言えない孤独。
「私はダメなんじゃないか」という自己否定。
さっきの生理の話は、こちらですね。
これは、わかりやすいと思います。
自分でも自覚できますし、周りから見てもわかる。「不妊治療がつらい」と言えば、多くの人がイメージするのは、こちらでしょう。
でも、もうひとつあるんです。
それが、「授かること」への脅威。
(ん?授かりたいと思っているのに、授かることが脅威?)
そう思いますよね。
でも、そうなんです。
そして僕がお伝えしたいのは、門番を閉じ続けている本丸は、実はこちらのほうが多い、ということです。
考えてみてください。門番の役割は、「妊娠していい状況かどうか」を判断することでしたよね?
では、「授かれなくてつらい」。
これ、門番にとってはどうでしょうか?
正直、そこまで判断材料にはなりません。
つらいのはわかる。
でも、それは「妊娠していいかどうか」の答えにはならないからです。
でも、こちらならどうでしょう?
「今、子どもができたら、大事なものを失うかもしれない」
これは、門番にとってど真ん中の判断材料です。
妊娠したら、まずいことが起きてしま雨ということです。
そう受け取ったら、門番はどうしますか?
当然、閉じますよね。
しかも厄介なのは、この2つ目の脅威、ほとんどの人が自覚していないということです。
だって、頭では心から子どもを望んでいるんですから。「授かることがこわい」なんて、自分でも思いたくない。
でも、体は正直です。
頭が「欲しい」と言っていても、奥のほうで「まずい」と感じていれば、そちらを優先します。
つまり、こういうことです。
授かれない苦しみだけをケアしても、門番は開かないことがある。
授かることへの脅威。
ここをほどかないかぎり、ブレーキは踏まれ続けてしまうのです。
■ 授かる力にも、2種類ある
もう一つ、ここで整理しておきたいことがあります。
実は、授かる力そのものにも、2種類あるのです。
ひとつは、「外側」の授かる力。
薬、注射、手術、サプリ、検査の数値。病院で受けられるもの全般ですね。
これは、必要な人が、必要なだけ使えばいいもの。僕はまったく否定しません。
そして、もうひとつが、「内側」の授かる力。
体が安心・安全モードでいられること。
心のブレーキがほどけていること。
そして、夫婦や家庭の空気。
この内側の力のことを、僕は「マタニティメンタル」と呼んでいます。
第1話、第2話でお伝えしてきたのは、要するにこういうことでした。
日本の不妊治療は、外側の力ばかりを追いかけて、内側の力をまるごと置き去りにしてきた。
世界一の回数を打ちながら、世界一当たらない。
その正体が、これです。
だから今日は、その置き去りにされてきた「内側の力」を、どうやって取り戻していくかをお伝えしていきます。
■ 門番を開けるには、2つの方向からアプローチする
では、脅威をどう扱っていけばいいのか?
僕は、2つの方向からのアプローチが必要だと考えています。
・ひとつは、今すぐ体を落ち着かせる方向。
・もうひとつは、意味付けそのものを変えていく方向。
この2つ、まったく別のものです。
順番に説明しますね。
まず、1つ目。
「産めない私には価値がない」こういう意味付けが、一瞬で頭をよぎった瞬間。
体は、もう反応し始めています。心臓がドキドキする。
息が浅くなる。手が冷たくなる。
このとき、いくら「その考え方はおかしいよ」と冷静に指摘したところで、体は止まってくれません。
なぜなら、体はすでに「危険モード」に入ってしまっているから。
こういうときは、まずその場で体を落ち着かせる必要があります。
これが、1つ目のアプローチです。
そして、2つ目。
でも、その場をしのいでも、根っこにある意味付けが残っていたら、どうなるでしょうか?
また同じ場面で、同じことが起きます。
生理が来るたびに。
結果が出ないたびに。
妊娠報告を見るたびに。
そして何より、さっきお伝えした「授かることへの脅威」のほうは、その場しのぎでは絶対に消えません。
だから、根っこにある意味付けそのものを、変えていく作業が必要になります。
イメージで言うと、こんな感じです。
1つ目は、火事が起きたときの消火活動。目の前の火を、まず消す。これをやらないと、被害が広がってしまいますよね。
2つ目は、なぜ火事が起きやすい家になっているのか、原因を直す作業。配線がむき出しだったり、燃えやすいものが置きっぱなしだったり。そこを直さない限り、また同じ場所で、火が出ます。
消火だけしていても、家そのものは変わりません。
原因だけ直していても、今起きている火は消えません。
だから、両方、必要なんです。
■ 僕が「体から始める」ことを強くおすすめする、3つの理由
順番としては、僕は圧倒的に「体から」をおすすめしています。
理由は、3つあります。
① 今すぐ、その場で入れるから
意味付けを変えていく作業には、時間がかかります。じっくり向き合って、少しずつほどいていくものだからです。
でも、目の前で心臓がバクバクしているとき、そんな時間はありませんよね。
体からのアプローチは、違います。
やれば、すぐに切り替わります。数十秒から、長くても数分。
生理が来た瞬間。
診察室で結果を告げられた瞬間。
妊娠報告のLINEを開いてしまった、その瞬間。
その場で、使えるんです。
② 簡単だから
体からのアプローチは、特別な才能もいりませんし、深く自分と向き合う必要もありません。
やり方さえ知っていれば、誰でも、今日からできます。
なぜなら、これは「考えて納得する」ものではないからです。
やれば、体が強制的にモードを切り替えてくれる。そういう仕組みを使っているんですね。
意志の強さも、理解の深さも、必要ありません。
③ 日常の中で、何度でも使えるから
これが、僕が一番伝えたい理由です。
考えてみてください。
不妊治療をしていると、日常のいたるところに、瞬間的なストレスが転がっていますよね。
電車で見かけた妊婦さん。
職場での何気ない一言。
義理の家族からの、悪気のない質問。
こういう小さな刺激が、その都度、体を「危険モード」に入れてしまいます。
そして、覚えておいてほしいんですが。
この瞬間的な反応の一つひとつが、授かる力を、少しずつ下げているんです。
門番は、大きな脅威だけに反応するわけではありません。
日常の中の小さな脅威にも、そのたびにゲートを閉じます。
だから、その都度、開け直す必要があるんですね。
体からのアプローチは、その”スイッチ”になります。
ストレスを感じた瞬間に、安心・安全モードへ、その場で戻す。
これを持っているかどうかで、一日の中で体がどれだけ「安全」の状態にいられるかが、まったく変わってきます。
まとめると、こうです。
すぐに使えて、簡単で、日常の中で何度でも繰り返せる。
だから僕は、まず体から整えることを、強くおすすめしています。
■ 「授かることへの脅威」の正体を見ていく
さて、ここからが本丸です。
さっきお伝えした、2つ目の脅威。「授かること」への脅威。
これ、自分では気づいていないことが、本当に多いんです。
いくつか、例を挙げてみますね。
「子どもができたら、キャリアが途切れてしまう」
ここまで積み上げてきた仕事があります。やっと任せてもらえるようになったポジションもある。
もちろん、子どもは欲しい。
心から欲しい。
でも、心のどこかで、こう思っている。
「今ここで抜けたら、もう戻れないかもしれない」
これ、悪いことでも何でもありません。当然の感覚ですよね。
でも体からすれば、「妊娠は、大事なものを失うリスク」という信号になります。
「経済的に、やっていけるだろうか……。」
治療にお金がかかっている。
そのうえ、生まれたら、もっとかかる。
教育費、住居、日々の生活。
数字を考えると、正直、不安です。
頭では「なんとかなる」と思おうとしていても、奥のほうでは消えていません。
そして体は、そちらのほうを聞いています。
「自由が、なくなってしまう」
夫婦二人で過ごす時間。
好きなときに出かけられること。
自分のために使える時間とお金。
子どもができたら、それが全部変わります。
望んでいるのに、失うのがこわい。
こんな矛盾を抱えている人は、本当に多いです。
そして、こう思ってしまう。
「そんなふうに思う私は、母親になる資格がないのかもしれない」
……そんなこと、まったくありませんよ。ごく自然な感覚です。
「夫と、二人でやっていけるだろうか」
今でさえ、温度差を感じている。話し合おうとすると、なんとなくすれ違う。
そんな状態で、子どもが生まれたら、どうなるんだろう。結局、一人で背負うことになるんじゃないか。
これも、体にとっては大きなブレーキになります。
「産むこと自体が、こわい」
出産の痛み。体の変化。何かあったらどうしよう。
口に出しにくいことですが、これを抱えている方も、少なくありません。
どうでしょうか?
「あ、これある」と思ったものが、一つくらいあったのではないでしょうか?
ここで大事なのは、これらが「授かりたい」という気持ちと、同時に存在しているということです。
アクセルを踏みながら、同時にブレーキも踏んでいる。前に進みたいのに、進めない。
門番からすれば、「この人は、本当に妊娠していいのだろうか?」と迷ってしまう状態なんですね。
■ そして、もっと奥深くにあるもの
ここまで挙げたものは、まだ気づきやすいほうです。
でも、意味付けの中には、もっと深いところに沈んでいて、自分ではまったく見えないものもあります。
たとえば、こんな例で考えてみてください。
小さい頃、いつも大変そうな顔をしているお母さんを見て育った女の子がいたとします。
家事に、仕事に、いつも余裕がなさそうなお母さん。
笑っている顔より、疲れている顔のほうが記憶に残っている。
その子は、こう感じます。
「お母さんは、幸せじゃない」
そして、こんな思いを、無意識のうちに抱いてしまうことがあるんです。
「お母さんが幸せじゃないのに、私だけ幸せになってはいけない」
これ、誰かに教えられたわけではありません。
本人も、こんなことを思っているなんて、まったく自覚していません。
でも、心の奥に、静かに根を張っています。
そして、大人になって、結婚して、子どもを望むようになったとき。
この根っこが、静かに働き始めます。
子どもを授かるというのは、その人にとって、人生で一番大きな「幸せ」かもしれません。
だとしたら、体はどう反応するでしょうか?
頭では、心から子どもを望んでいる。
でも、もっと深いところで、「幸せになってはいけない」というルールが、ずっと生きている。
これ、門番からすれば、明確な矛盾ですよね。
そして体は、迷ったとき、深いところにあるルールのほうを優先します。
だから、門番は閉じたままになる。
本人は、なぜ授からないのか、まったく心当たりがありません。
生活も整えている。治療も真面目に受けている。ストレスだって、人並みだと思っている。
それなのに、体の奥では、まったく別のことが起きているんです。
■ 意味付けは、十人十色
ここまでいくつか例を挙げてきましたが、これはほんの一部です。
意味付けというのは、本当に十人十色なんですね。
その人が生きてきた道のり。
家族のかたち。
仕事。
これまでの経験。
かけられた言葉。
目撃した出来事。
そのすべてが混ざり合って、その人だけの意味付けが作られています。
だから、「あなたの原因はこれですよ」と、誰かが外から決めつけられるものではありません。
自分の中を、丁寧に見ていくしかないんです。
そして、これが、体からのアプローチだけでは届かない領域です。
その場を落ち着かせることはできても、根っこにあるルールは残ったまま。
だからまた、同じ場面で、同じことが起きてしまう。
根っこそのものを、見つけて、ほどいていく必要があります。
でも、ここで一つ、とても大事な注意点があります。
■ ここで、絶対にやってはいけないこと
(じゃあ、その考え方を変えればいいんだな)
そう思われたかもしれません。
ここです。ここが、一番危ないところなんです。
冒頭でお伝えしたことを、もう一度書きます。
ポジティブシンキングは、絶対にやめてください。
たとえば、こんな感情が湧いてきたとします。
「友だちの妊娠報告、正直つらい。素直に喜べない」
このとき、多くの人がやってしまうのが、これです。
「いや、そんなふうに思っちゃダメだ。ちゃんと祝福しなきゃ」
「私は幸せだ。恵まれてる。感謝しなきゃ」
「大丈夫!いけるいける!」
……気持ちは、すごくわかります。
でも、これ、何をしているかというと、湧いてきた自分の気持ちを、なかったことにしているんです。
短期決戦ならいですが、不妊でこれでするのは危険です。
つらいと感じている自分がいる。
でも、その声を聞かずに、上から別の言葉を貼りつけて、蓋をする。
そして、ずっと脅威を感じ続ける。
これが、ポジティブシンキングの正体です。
■ 蓋をした感情は、消えません
ここ、誤解されがちなところなんですが。
蓋をすれば、その感情がなくなるわけではありません。
見えなくなるだけです。中では、ずっと生き続けています。
しかも、無視されたぶん、静かに大きくなっていく。
「誰にもわかってもらえない」
いや、それどころではありません。
自分にすら、わかってもらえていないわけですから。
これ、体からすればどうでしょうか?
一番の味方であるはずの自分から、否定され続けている状態です。
安心できるはずが、ありませんよね。
そして、もう一つ。
ポジティブシンキングをやり続けると、こんなことが起きます。
「前向きに考えなきゃ」と思う。でも、うまく思えない。
すると今度は、前向きになれない自分を責め始めるんです。
「私はなんてネガティブなんだろう」
「こんなだから授からないんだ」
苦しむ材料が、一つ増えただけ。
最初はうまくいっているように感じる。それが厄介なんですね。
でも、続けるほど苦しくなる。そして最後には、自分を壊す方向へ向かっていきます。
内なる自分を、無視してはいけません。
■ 蓋をするのではなく、開ける
僕がお伝えしているのは、その真逆のアプローチです。
湧いてきた感情に、蓋をしない。
なぜなら、それは、あなたを守ろうとして出てきているものだからです。
傷つきそうな場所から遠ざけようとしている。
これ以上つらい思いをしないように、警報を鳴らしている。
敵じゃないんです。
ずっと、味方だったんですね。
蓋をするのではなく、開ける。
方向が、まったく逆ですよね。
■ そして、アプローチは一つではありません
ここで、もう一つ大事なことをお伝えしておきます。
ここまで「意味付けを変える」という言い方をしてきましたが。
これは、数あるアプローチのうちの、ひとつでしかありません。
自分に合っているもの試すのが一番です。
たとえば、その出来事の記憶のしまわれ方そのものを変えていく方法があります。
同じ出来事でも、どんな感覚とセットで保存されているかによって、体の反応はまるで違ってきます。
だから、記憶を消すのではなく、しまい方を変える。
あるいは、体を使って、「これは脅威ではない」と学習し直させる方法もあります。頭で納得させるのではなく、体に直接、新しい経験を覚えさせていく。
理屈より、こちらのほうが早いケースも少なくありません。
他にも、アプローチはたくさんあります。
なぜ、こんなにいろいろあるのか?
それは、答えは単純で、人によって効くものが違うからです。
意味付けが十人十色なら、ほどき方も十人十色。
大事なのは、自分に合ったやり方を見つけることなんですね。
■ ただし、自己流でやると事故ります
さて、ここからが本当に大事な話です。
(じゃあ、自分でいろいろ試してみよう)
そう思われたかもしれません。
でも、これ、自己流でやると事故ります。
脅かすようで申し訳ないんですが、本当です。理由を説明させてください。
さっきの例を思い出してください。
「お母さんが幸せじゃないのに、私だけ幸せになってはいけない」
この意味付けを見つけたとして。
「よし、これを変えよう」
そう思って、自分で取り組んだとします。
何が起きると思いますか?
多くの場合、こうなります。
「私は幸せになっていいんだ」と、何度も自分に言い聞かせる。
これは、NGです。
でも、心の奥は納得しません。だって、何十年もかけて作られたルールですから。
すると、こうなる。
「やっぱり、そう思えない」
「変えられない自分は、やっぱりダメなんだ」
変えようとした結果、逆にその信じ込みを強化してしまうんです。
「幸せになってはいけない」というルールに、「しかも、それを変えることすらできない」という証拠を、自分で追加してしまった。
これが、事故です。
しかも、こういう深い意味付けは、たいてい痛みとセットになっています。
思い出したくない記憶。
見たくない感情。
そこに、準備なく手を突っ込んだらどうなるか。
火を消すつもりが、油を注ぐことになりかねません。
■ もう一つ、順番の問題もあります
それから、これも大事なところです。
さきほど、「まず体から」とお伝えしましたよね。
あれには、理由があります。
体が「危険モード」に入っている状態で、自分の奥を掘る作業をやったら、どうなるでしょうか。
冷静に見つめられるわけがありませんよね。
むしろ、痛みを掘り返して、さらにパニックになってしまう。
つまり、順番を間違えると、逆効果になるんです。
まず体を落ち着かせる。安心・安全モードに入る。そのうえで、じっくり奥を見ていく。
これが基本です。
「やってみたけど、効果がなかった」
そうおっしゃる方の多くは、能力の問題ではありません。
順番と、やり方の問題なんですね。
■ だからこそ、もったいないんです
ここまで、危ない危ないと書いてきましたが。
誤解しないでいただきたいのは、これは決して難しいことではない、ということです。
特別な才能はいりません。
何年も修行する必要もありません。
才能ではなく、正しい順番で学べる技術なんです。
だからこそ、正しくやってほしい。
やり方一つで、結果がまったく変わってしまう。これほどもったいないことはありませんから。
正しく取り組めば、本当に効果が高いです。
これは、僕自身の経験からも、はっきり言えます。
■ 治療を、お休みしたいと思っているあなたへ
こんな話を、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
何年も治療を続けていた方が、あるとき治療をやめた。
そうしたら、その後しばらくして、自然に授かった。
「治療をやめたから授かったんだ」
そう語られがちです。
でも、もう少し正確に見ていきましょう。
治療をやめたことで、何が起きたのか?
毎月のプレッシャーから、解放されました。
⇩
結果に一喜一憂する日々が、終わりました。
⇩
「今月こそは」という緊張が、ほどけました。
つまり、治療をやめたことで、体が安心・安全モードになった。これが本質です。
門番が「もう危険じゃない」と判断して、ゲートを開けた。そういう話なんですね。
だとしたら、見るべきポイントが変わってきますよね。
大事なのは、治療を続けるか、やめるかではありません。
体が、安心・安全モードにいられるかどうか。
ここなんです。
■ どちらの道でも、土台は同じです
ここで、はっきりさせておきたいことがあります。
僕は、薬を否定しているわけではありません。
必要な人には、必要です。医療の力を借りたほうが早いケースも、たくさんあります。それを我慢する必要は、まったくありません。
ただ、さきほどお伝えした「外側の授かる力」と「内側の授かる力」。
この2つは、対立するものではないんです。
そして大事なのは、こういうことです。
内側の力は、どちらの道を選んでも、共通の土台になる。
治療を続ける人にとっては、その効果を最大限に受け取るための土台になります。
治療を休む人にとっては、内側から授かる力を引き上げる、そのものになります。
やめる人にとっても、進む人にとっても、必要なんですね。
だから、まず、「内側」から整えることを、僕は強く推奨します。
■ 立ち止まることは、逃げではありません
今、こう思っている方もいるかもしれません。
「もう、休みたい」
「正直、やめたい」
その気持ち、まったく間違っていないと思います。
第2話でお伝えした通り、治療そのものが脅威になってしまっている方は、決して少なくありません。
そういう状態のまま走り続けても、門番は閉じたままです。
アクセルを踏み込むほど、ブレーキも強く踏まれていく。
だとしたら、一度立ち止まる。
これは、逃げではありません。戦略です。
そして、立ち止まっている間は、何もしない時間ではありませんよ。
内側を整える時間です。
体を安心・安全モードに戻す。
奥にある脅威をほどく。
夫婦の関係を整え直す。
そうやって土台ができたとき、次にどう進むかは、自然と見えてきます。
■ これは、妊娠して終わりの話ではありません
最後に、もう一つだけ。
「マタニティメンタル」は、実は「妊娠するためのメンタル」ではありません。
お母さんが安心・安全モードでいること。
それは、お腹の中にいるときから、そして生まれてからも、子どもにずっと伝わっていきます。
安心の中で育った子は、安心を知っています。
そしてその子が親になったとき、同じものを、次の世代に渡していく。
つまりこれは、20年先、30年先の家族の土台をつくる話でもあるんですね。
授かるためだけじゃない。
そのあと、ずっと続いていくもの。
だから僕は、これを一時的なテクニックではなく、あり方だと思っています。
■ 最後に
日本は、世界一治療をしていて、世界一授かれない国です。
……この事実を、僕は何度書いても、慣れることができません。
これだけの人が、これだけのお金と時間と涙を注ぎ込んでいる。
世界のどの国よりも、必死に、真剣に向き合っている。
なのに、世界のどの国よりも、その願いが叶っていない。
こんなに悲しいことが、あるでしょうか……。
でも、断言します。
それは、あなたの努力が足りないせいでは、絶対にありません。
内側の授かる力という、一番大事なピースが、まるごと抜け落ちていた。
ただ、それだけのことなんです。
そして、そのピースは、待っていても誰かが渡してくれるものではありません。
だからこそ、自分で取りにいくために、こうして情報を集めているんですよね。
この記事だって、こうしてここまで読んでいることが、あなたが、人任せではなく、自分で「授かる力」を引き出そうとしていることの証明です。
素晴らしいです。
大丈夫です。その方法は、思っているより、ずっと手の届くところにありますから。
アクセルを踏み込むのは、もう十分です。
まずは、ブレーキから足を離すところから始めましょう。
詳しくは動画セミナー:「授かる力」を引き出すマタニティメンタル・メソッド(はじめの講義)で解説しました。
メルマガで配布してますので、以下のフォームからお受け取って、「マタニティメンタル」を育む、はじめの一歩を歩み始めてください。
あなたの門が開いていきますように。
