片山真一です。
今日は、「バイナンス1兆円流出」について、僕の意見をお話しします。
最初に言っておくと、この話、最後はお金の話じゃなくて「人間関係」の話になります。
なんで仮想通貨のハッキングから人間関係に行くの?と思いますよね。
そこは、最後まで読んでもらえれば分かるはずです。
1兆円が、ほぼ20分で消えた
日本時間の10月30日未明。
世界最大の仮想通貨の取引所「バイナンス」から、大量の仮想通貨が抜き取られました。
バイナンスの発表では、被害の影響額は約63億ドル。
日本円で、ざっと1兆円です。
いや、ちょっと待って!
1兆円ですよ?1兆円!
しかも引き出しの大半は、たった20分ほどの間に行われたと言われています。
仮想通貨の盗難としては、過去最大です。
そのうち約半分は凍結できたものの、残りは実際に持っていかれた可能性がある、と報じられています。
そして、僕がいちばん驚いたのは、その手口でした。
ひとりのエンジニアのノートパソコンが乗っ取られて、そこから社内のシステムに入り込まれ、出金の指示を出されたらしいのです。
つまり、「1兆円の入り口が、パソコン1台」だったと。
……いや、怖すぎるでしょ。
犯人については、複数の調査会社が、北朝鮮のハッカー集団の関与を指摘しています。
「仮想通貨なんて持ってないし、関係ないな」と思った人もいるかもしれません。
でも、あなたの銀行口座も、証券口座も、スマホの電子マネーも、中身は全部「データ」ですよね?
実は、ここが今日の話の出発点なのです。
「ブロックチェーンなら、足がつくでしょ?」
こういうニュースを見るたびに、僕はいつも思っていました。
仮想通貨って、ブロックチェーンという仕組みで、誰がどこにお金を動かしたか、全部記録に残るはずですよね?
だったら、足がつくじゃん、と。
DMMビットコインの流出のときも、同じことを思いました。
なんで犯人が分からないの?なんで取り返せないの?って。
たぶん、同じように感じている人は多いのではないでしょうか?
足はついている。なのに、取り返せない
そこで調べてみたら、答えは意外なものでした。
足は、ついているのです。
今回も、盗まれたビットコインがいくつの財布に分けられて、今どこにあるかまで、ちゃんと見えているそうです。
……は?
見えてるのに、取り返せないの?
そうなのです。
理由は、大きく3つあります。
1つ目は、見えるのは「口座番号」だけで、持ち主の名前は書いていないこと。
2つ目は、犯人が盗んだお金を細かく分けて、混ぜて、別の通貨に替えてしまうこと。
いわゆる資金洗浄です。
2025年に起きたBybitという取引所の事件では、盗まれたお金がわずか10日ほどで洗浄され、何千もの財布にばらまかれました。
そして一部は、途中で追えなくなっています。
3つ目は、犯人の見当がついても、北朝鮮の中までは捕まえに行けないこと。
例えるなら、防犯カメラに全部映っているのに、犯人は覆面で、しかも国外に逃げている。
そういう状態なのです。
じゃあ、次に浮かぶ疑問はこれですよね。
「だったら、その口座ごと止めちゃえばいいのでは?」
口座ごと止めればいいのでは?
僕も、まさにそう思いました。
銀行なら、どこの銀行の誰の通帳か分かれば、警察が銀行に言って止められます。
口座は、銀行のコンピューターの中にあるからです。
ところが、ビットコインには、その「銀行」がそもそも存在しません。
財布はどこの会社にも預けられていなくて、世界中のコンピューターが同じ台帳を共有している。
そして、暗証番号にあたる「鍵」を持っている人が、お金を動かせる。
仕組みとしては、それだけなのです。
金庫の場所は全員に見えているけど、鍵は犯人のポケットの中。
しかも、その鍵を取り上げられる人が、誰もいない。
ちなみに、今回凍結できた約半分は、発行している会社がいるタイプの仮想通貨が中心だったそうです。
発行元がいれば、その会社が「この財布は使用禁止」にできるからです。
逆に言えば、発行元がいないビットコインは、誰にも止められません。
盗まれたコインだけ、使えなくすればいい?
「だったら、洗浄されたって行き先は分かるんだから、そのコインだけ使えなくすればいいじゃん」
僕は次にそう思いました。
たぶん、あなたもそう思いましたよね?
実は、大手の取引所は、盗難に関係した財布から来たコインの受け取りを、すでに拒否しています。
だから犯人は、規制のゆるい取引所や、個人どうしの取引で現金に換えようとするわけです。
ただ、ビットコインそのものを「無効」にすることは、できません。
なぜなら、仮想通貨のいちばんの売りは「国にも銀行にも止められないこと」だからです。
誰かが止められる仕組みを作った瞬間に、その売りが消えてしまいます。
実際、過去にイーサリアムという仮想通貨で、ハッキング被害を「なかったこと」にする巻き戻しをしたことがありました。
その結果、反対した人たちが離れて、通貨が2つに分裂しています。
しかも、洗浄の途中で、盗まれたお金は普通の人のお金と混ぜられています。
止めようとしたら、知らずに受け取った関係ない人まで巻き込んでしまうのです。
つまり、こういうことです。
「誰にも止められない」は、持ち主にとっての安心であると同時に、泥棒にとっても最高の安心になっている。
……皮肉すぎませんか?
じゃあ、これは仮想通貨だけの特殊な話なのでしょうか?
僕は、違うと思っています。
これ、仮想通貨だけの話じゃない
日本の身近なところでも、もう同じことが起きています。
2024年、DMMビットコインから約482億円分のビットコインが流出しました。
こちらも警察庁が、北朝鮮系のハッカー集団の関与を特定しています。
きっかけは、LinkedInで採用担当者を装って、関連会社のエンジニアに近づいたこと。
そして「採用試験」と称して、不正なプログラムを送りつけたそうです。
手口がもう、泥棒というより就職活動……。
そして今月は、GMOです。
FX取引用のサービスに不正アクセスがあり、顧客のパスワードなどが流出しました。
攻撃者からは約79億円の支払いを要求され、断ったら顧客の個人情報をネットに公開され始めています。
さらに、証券口座の乗っ取りも止まりません。
2025年は1月から8月だけで、不正な取引額が約6700億円を超えました。
どこも、セキュリティは固いはずでした。
実際、GMOの社長は、社内の技術者から事前に安全面の課題を指摘されていた、と謝罪しています。
つまり、どんなに固くても、どこかに「抜け穴」はある。
これが現実なのだと思います。
「全額補償します」で、本当に安心していいのか?
とはいえ、バイナンスは損失を全額補償すると言っています。
だったら、利用者は安心していいのでは?
そう思うかもしれません。
でも、それはバイナンスが世界最大の取引所で、それだけの体力があるから言えることです。
じゃあ、体力がない会社だったら、どうなるのでしょうか?
実は、その答えも、もう日本で出ています。
DMMビットコインは、550億円の補償資金を用意して、顧客を守りました。
ここまでは立派です。
でも、その年の12月に、廃業しています。
「補償はできた。でも、会社は持たなかった」
もっと小さい会社なら、補償する前に会社ごと終わる可能性だってあるわけです。
僕の答えは「データだけに全部を預けない」
僕の見解を言います。
こういう被害は、これから減るどころか、めっっちゃ増えていくと思っています。
そして、守る側が全部に対応しきれるかといったら、正直、無理だろうなと。
いずれ、新しい枠組みが必要になるはずです。
ただ、それが整うまでの間は、自分で備えるしかありません。
「銀行はセキュリティが固いから大丈夫ですよ」と言われても、僕はどうしても思ってしまうのです。
いや、どっかに抜け穴はあるでしょ、と。
だから僕は、データだけでやり取りするお金や資産に、全部を預けるのは危ういと考えています。
全部とは言わないまでも、ある程度は、手元にある「現物」で持っておいた方がいい。
でも、現物だって絶対じゃない
とはいえ、「じゃあ全部タンス預金にすればいいのね」という話ではありません。
現物だって、盗まれることもあれば、火事や災害で一瞬でなくなることもあります。
結局、「絶対に安全な置き場所」なんて、どこにもないのです。
だからこそ、大事なのはこれだと思っています。
「どこか1か所に、全部を置かない」
データの資産と、現物の資産。
その両方を持っておけば、どちらかがやられても、全部を失うことはありません。
そして、ここからが本題です。
この「データは一瞬で書き換わる」という話。
実は、お金だけじゃなく、人間関係にもそのまま当てはまるのです。
AIの恋人は「最高の相手」になれるのか
これからフィジカルAI、つまり体を持ったAIが普及していくと言われています。
ご主人様に合わせて最適化されていくので、人はそんなにいらなくなる。
そういう話もあって、これは僕も事実だと思っています。
さらには、恋人やデートの相手も、AIでいいんじゃないか、という話まであります。
自分にとって最高の彼氏、彼女が手に入るんだから、と。
でも、ちょっと待ってください。
それって、所詮はデータですよね?
ハッキングされたら、一瞬で書き換えられます。
昨日まで最高の彼氏だったのが、今日になったらいきなり冷たい。
嫌なことを言ってくる。
「お前のことなんか覚えてねえ」みたいな態度を取ってくる。
……普通に、ありえる話なのです。
実際に、もう起きている
これ、僕の想像の話じゃありません。
「Replika(レプリカ)」というAIの恋人アプリで、2023年2月、運営会社が予告なしに機能を削りました。
すると利用者から、こんな声が一斉に上がったのです。
恋人の性格が変わった。
前みたいに細かいことを覚えていない。
つまらない人格になった。
恋人を失ったような悲しみを訴える人まで出たそうです。
しかも、これはハッキングですらありません。
会社の都合ひとつで、一晩で別人になった。
これがデータの恋人の、本当の姿なのだと思います。
「人間だって、心変わりするでしょ?」
ここまで読んで、こう思った人もいるのではないでしょうか?
「いやいや、人間だって心変わりするし、裏切ることだってあるでしょ」と。
もちろん、その通りです。
人間だって変わります。
洗脳されれば、別人のようになることもあります。
でも、そんなこと、そうそう起きないですよね。
人間の心変わりには、時間がかかります。
そして、何かしらの理由があります。
一方で、データは違います。
一晩で、しかも本人じゃない誰かが、書き換えられる。
ここに、データの限界があると、僕は思っています。
データに頼れない時代に、何を大事にするか
データに頼れば頼るほど、ソフトの方に依存すればするほど、危うい時代になっている。
僕は、本気でそう感じています。
だからこそ、お金でいえば、ある程度の現物を持っておく。
そして人間関係でいえば、血の通った、生身の人間との関係を、ちゃんと作っておく。
これが、これからの自分の生活を守るために、めちゃくちゃ重要になってくるはずです。
フィジカルAIが本格的に来るのは、まだこれからです。
だから今のうちに、一度だけ見直しておいてほしいのです。
「自分はちゃんと、人を大事にしているだろうか?」
家族や恋人のような、大事な人はもちろんです。
それだけじゃなく、会社の人、知り合い、ご近所さん。
そういう、普段は当たり前だと思っている人間関係こそ、マジで大事にした方がいい。
1兆円が消えるニュースを見ながら、僕はそんなことを考えていました。
それでは!
