片山真一です。
今週、『キリンを作った男』という本を読みました。
そうしたら、ちょうどアサヒ、キリン、サントリー、サッポロのビール大手4社に、「公正取引委員会の強制調査」というニュースが出てきたのです。
なので今日は、このビール会社のカルテル疑惑について、「結局、問題の本質はこれじゃないか?!」という僕の意見をお話しします。
ちなみに『キリンを作った男』は、「一番搾り」「淡麗」「氷結」など、超ヒット商品を次々と生み出したキリンのマーケター・前田仁さんの評伝です。
当時のキリンやビール業界の空気が感じられる、いい本でした。
報道は、いつも一方的
こういう報道を見ると、僕はいつも違和感を覚えます。
職業病なのか?
理由は、報道が一方的すぎるからです。
本質を正確につかむには、右からの情報があれば左から、上からの情報があれば下から。
相反する情報を、わざわざ取りにいく必要があります。
そして両方をそろえたうえで、「僕の意見はこうです」と言う。
それが、まともな情報の取り方だと思っています。
今回も、そのやり方で調べてみました。
すると、最初に思っていたのとは、まっっったく違う景色が見えてきたのです。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
疑われているのは、値上げのカルテルです。
4社の課長クラスが、業界団体の会合のあとに「裏会」を開いて、値上げの時期や幅をそろえていたのではないか。
そういう疑いです。
(まだ、あくまで疑いの段階ですけどね)
1社だけ値上げしたら、その会社だけお客さんが離れてしまう。
だったら、みんなで一緒に上げようぜ、と。
要は、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ってやつですね。
じゃあ、なんでそこまでしなきゃいけなかったのでしょうか?
最初に僕の頭に浮かんだのは、ビール業界の「三重苦」でした。
お酒離れで、ビールの販売量はピークから4割以上も減っている。
原材料も物流費も、上がりっぱなし。
そこに、世界的に見てもかなり高い酒税。
そりゃあ苦しいよな、値上げもしたくなるよな、と。
……と思っていたのですが。
調べてみたら、話がまったく違いました。
調べたら、話がまったく違った
まず、酒税です。
実は、「本ちゃんのビール」の酒税は、ここ数年、下がり続けています。
350ml缶1本あたり、77円→70円→63.35円。
そして今年の10月からは、54.25円です。
上がっているのは、発泡酒や第3のビール、チューハイの方なのです。
次に、業績です。
「三重苦で瀕死」かと思いきや、キリンは、なんと過去最高益。
健康食品などビール以外も伸びてはいるのですが、お酒の事業も、売上ほぼ横ばいで利益は12%アップしています。
アサヒは減益ですが、原因はサイバー攻撃で工場や出荷が止まったこと。
サントリーも減益ですが、原因は海外の不振で、国内のビールはむしろ売上が伸びています。
そしてサッポロは、利益が約5割増。
え、ちょっと待って!
全然、瀕死じゃないじゃん!
もちろん、4社全部が絶好調というわけではありません。
でも、「ビールが売れなくて追い詰められて……」というイメージとは、だいぶ違います。
だとすると、新しい疑問が出てきますよね。
なんで4社そろって値上げする必要があったのか?
なぜ、値上げをそろえる必要があったのか
公正取引委員会も、まだ動機は明かしていません。
なので、ここからは僕の見立てです。
縮んでいく国内市場で、値上げを「確実に」通したかったのだと思います。
売れる量が減っても、1本あたりでちゃんと稼げれば、利益は守れます。
でも、1社だけ上げたら、お客さんはライバルに流れてしまう。
だから、そろえたかったのではないか、と。
しかも、この業界は、競争の怖さを身をもって知っているのです。
2002年、真夏の値下げ合戦
2002年、キリンが発泡酒の新商品を、通常より10円安い値段で出しました。
するとアサヒが、ヒット中だった「本生」を10円値下げ。
残りの2社も次々に追随して、真夏の値下げ合戦に突入します。
年初に110円前後だった発泡酒が、スーパーやディスカウント店では100円を切るところまで出てきたそうです。
結果、どうなったでしょうか?
各社の利益は吹き飛びました。
さらに国からは「そんなに安くできるなら」と見られて、翌2003年5月、発泡酒は1缶10円の増税。
殴り合えば増税されて、手を組めば強制調査。
……なかなかハードな業界です(苦笑)
もちろん、本当にカルテルを組んでいたなら、それはよくありません。
違法は違法です。
そこは、はっきり言っておきます。
それでも、僕は4社を叩く気になれない
ただ、そのうえで、僕は4社を叩く気にはなれません。
大手のビールは、ケースで買えば1缶200円くらいです。
一方で、クラフトビール最大手の「よなよなエール」で、1缶250円くらい。
地方の小さな醸造所のクラフトビールだと、400円、500円を超えるのも珍しくありません。
大量につくって、大量に運んで、規模を活かして、手が届く値段に抑えてくれている。
これって、よぉぉぉ〜〜〜く考えると、すごいことですよね。
僕自身はビールをほとんど飲まないのですが、毎晩の1缶を楽しみにしている人にとっては、値上げは痛いはずです。
そして、ここからが本題です。
4社を叩く前に、目を向けるべき「本当の問題」があると、僕は思っています。
本当の問題は「酒税」
それが、「酒税」です。
1缶200円のビールのうち、酒税は54.25円。
つまり、4分の1以上が税金なのです。
じゃあ、海外はどうなのでしょうか?
ビールの本場、ドイツは約4円。
アメリカは約7円。
……え、桁、間違えてません?
もし日本の酒税をドイツ並みにしたら、1缶200円のビールは約145円。
アメリカ並みでも、約150円になる計算です。
(酒税にも消費税がかかっているので、そのぶんも含めて計算しています。税金に、税金って……)
さらに、業界団体によると、アルコール1度あたりで見て、ビールに蒸留酒より重い税をかけているのは、主要国で日本だけだそうです。
見方によっては、国がビール会社をいじめているようにすら見えます。
損をしているのは、僕たち
そして、ここが大事なところです。
酒税が高くて苦しいのは、ビール会社だけではありません。
その税金は、結局、値段に上乗せされます。
払っているのは、僕たち消費者なのです。
しかも今回の見直しでは、ビールが減税された代わりに、発泡酒や第3のビール、チューハイが増税されました。
少しでも安いお酒で晩酌を、という人ほど、負担が増えているわけです。
じゃあ、その酒税を決めているのは誰でしょうか?
国会議員です。
選ぶ力は、僕たちにある
ここで僕が言いたいのは、僕たちには「選ぶ力」がある、ということです。
高いと思うなら、2缶を1缶にする。
50円足して、よなよなエールにしてみる。
沖縄に行ったら、オリオンを飲む。
お客さんが離れて困るのは、ビール会社です。
困れば、第4のビールでも第5のビールでも、次の手を打ってくるはずです。
そして、もう1つ。
政治家を選ぶ力も、僕たちにあります。
この「政治家を選ぶ」という話で、どうしても話しておきたい人がいます。
大阪府知事の、吉村洋文さんです。
僕が吉村さんを胡散臭いと思った理由
吉村さんが出てきたとき、世間はものすごい人気でした。
でも僕は、違和感しかありませんでした。
理由は、弁護士時代の仕事です。
吉村さんは、弁護士になったばかりの2000年代初頭、消費者金融大手・武富士の側で、武富士を批判したメディアとの裁判を担当していました。
当時の消費者金融って、グレーを通り越して、かなりブラックな業界です。
金利は最大29.2%、いわゆる「グレーゾーン金利」。
2006年には、アイフルが違法な取り立てなどで、全国1,667店舗すべての業務停止処分を受けています。
その後、法律が変わって、2010年にグレーゾーン金利は完全に撤廃されました。
そして武富士の会長は、2003年、ジャーナリストへの盗聴で逮捕。
裁判では、会長も会社も、罪を認めています。
そういう会社の側に立って、批判する側と戦う仕事を選んだ人を、府のトップに据えるのは危ないのではないか。
僕は、そう感じたわけです。
甘いマスクだか、スラッとしてるだか知りませんけど、それって政治家と関係ないですよね?
府知事は、芸能人じゃないんだから。
見た目は、しょぼくてもいい。
ちゃんとした倫理観を持って、仕事をしてくれれば。
そこが一番大事ではないでしょうか?
だから、胡散臭いと思いました。
ちなみにこの話、実家で両親とテレビを見ながら、つい口に出してしまったことがありまして。
「こんな胡散臭い人に投票する人の頭の構造がわからない」
……両親、吉村さんのファンでした。
空気、最悪です(笑)
大阪市の人は、よく分かっている
その後の吉村さんです。
2020年、大阪市をなくして特別区に再編する「大阪都構想」が、2回目の住民投票で否決されました。
そのとき吉村さんは、「僕自身が大阪都構想に挑戦することはありません」と言い切っています。
それが、2026年1月。
知事を辞めて出直し選挙に出て、3回目の住民投票を目指すと表明しました。
いや、言ってたことと違うやん!
正直、ふざけてるなと思いました。
でも、僕が本当に言いたいのは、ここからです。
大阪市民は、人気の政治家が旗を振っても、都構想には2回「NO」を出しています。
2015年も、2020年も。
人気があるかどうかと、自分の街の形をどうするかは、別の話。
それを、ちゃんと分けて判断しているのです。
大阪市の人、よく分かってるなぁ、と。
僕は大阪の人、関西の人が大好きなのですが、こういうシビアで確かな目を持っているところも含めて、好きです。
4社を叩くより、政治家を選ぶ
話をビールに戻します。
もし4社がカルテルを組んでいたなら、それはよくありません。
でも、4社を叩いても、酒税は1円も下がらないのです。
だったら、僕たちは僕たちで、政治家を選べばいい。
たとえばビール好きなら、地元に「酒税を下げるべきだ」と主張している政治家がいれば、その人に投票する。
それも立派な1つの行動だと思います。
ビールを飲むか、飲まないか。
誰に投票するか、しないか。
情報を鵜呑みにせず、自分で取りにいって、自分で選ぶ。
それが自分を守って、この国を少しずつ、いい方向に動かしていくのではないかな、と思っています。
あなたが最近「自分で選んだ」ことは、何でしょうか?
それでは!
