人には、誰もが持っている考え方の「クセ」というものがあります。
そんなクセのひとつにあるのが「フレーミング効果」というものです。
今回はこの「フレーミング効果」をご紹介しようと思います。
でも、「誰でも持っている」とはどういうことでしょう。
実は、僕たちの脳は常々効率よく働きたいと思っています。
そこで、ひとつの思考をする場合、ある程度の枠にはめて考えようとするのです。
それは、あなたが外食する時のお店の選び方を考えてみてもわかります。
たとえば、「和食」か「洋食」で決めたり、「高級店」か「大衆食堂」で決めたりしますね。
それは、こうした大まかな枠組みを作った方が、答えが出しやすいからです。
この枠組みのことを「フレーム」といいます。
このフレームは、思考の効率を良くするのですが、同時にその思考はフレームに影響されやすくなります。
こうして、フレームが思考に影響することを「フレーミング効果」というのですね。
しかし、このフレームは「食事の種類を決める」のような、意識的に作られるものだけではありません。
むしろ人の脳では、無意識下で「フレーム」がたくさん作られているのです。
そして、そのフレームによって人は思考し、「フレーミング効果」で日々の行動していると言っても過言ではありません。
「ちょっと待って、フレームが無意識下で作られるってどういうこと?」
はい、そう思うのも無理ありませんね。
それを、今からじっくりお伝えして行きますので、楽しみにして下さい。
では、詳しく始めましょう。
フレーミング効果の例
心理学
まずは、自分の中で作られているフレームを、心理学観点からご紹介します。
幾つか例をあげてみますね。
手術
手術が必要なあなたに、ドクターはどちらの説明をした方がいいでしょうか。
Ⓐこの手術では90%の人が成功しています。
Ⓑこの手術では100人中10人の人が失敗しています。
この説明では、Ⓐと言われた方が手術希望者は増えるのです。
よく見ると同じ確率なのに、どうしてそうなるのでしょうか。
ここでは「成功」と「失敗」にフレーミング効果が表れています。
こんな時、脳は、ポジティブな言葉とネガティブな言葉と比べた場合
ポジティブな言葉の方にフレームを当てたがるという特性があります。
そこで、この説明では「成功」と使われている方を、気持ちよく感じるのです。
もうひとつ、フレームの持つ特徴がわかる例をあげてみます。
鍾乳洞
鍾乳洞は、夏に入ると「涼しい」と感じます。
でも、冬に入ると「暖かい」と感じますね。
しかし、鍾乳洞の中の気温は、一年を通して20℃程度とほぼ一定なのです。
ここでは僕たちに「夏は暑い」「冬は涼しい」というフレームがあります。
なので、25℃にもなる夏に入ると「涼しい」と感じ、20℃以下の冬に訪れると「暖かい」と感じるのです。
これも、同じ温度でも、季節で体感が変わるところが「フレーミング効果の働き」というわけですね。
こうした、いわゆる固定観念も「フレーム」のひとつと覚えておいて下さい。
映画鑑賞券
ここで二つの状況を提示しますので、自分がその状況にあると思って読んでいって下さい。
Ⓐあなたは映画を見に行きます。
1000円の前売り券があるので、前売り券と3000円の現金を持って出かけました。
ところが、映画館の前で前売り券を家に忘れてきたことを思い出しました。
開演時間は迫っているので家に取りに行くのは無理です。
Ⓑあなたは映画を見に行きます。
当日券を買うつもりなので現金を4000円持って出かけました。
しかし、映画館の前で、途中で1000円を落としたことに気が付きました。
でも、まだ所持金はあるので映画は見られます。
この場合、損をしたと強く感じるのはどちらでしょうか?
多くの人はⒶと答えます。
でも、よく見ると、あなたの損失は1000円で、同じですね。
それなのに、Ⓐと答えるのはなぜでしょうか。
この場合、あなたが映画を観ることは、「自分が楽しむため」のものです。
そして、その料金を払うことは、楽しみのための「投資」になります。
実は、この「投資をする」ことが「フレーム」になっているのです。
この設問の場合は「映画観賞券」を買う行為が「投資」になります。
そして、この時脳は「映画観賞券」を買った時点で「投資は済んだ」と認識するのです。
前売り券を買えば、その時が「投資終了」になります。
しかし、Ⓐの場合は、結果的に「映画観賞券」を2回買う事になります。
そして脳は、「すでに投資が済んでいるのに、また同じ投資をしなければならない」と、「投資」というフレームの中に注目して考えてしまうのです。
一方、Ⓑでは「鑑賞券を買うのはこれから」ということで、投資は初めてになります。
なので、投資に関しては損失にはなりません。
それで、多くの人はⒷの場合より、Ⓐの場合の方が損をした気分になるのです。
僕たちの脳は、こんな時、お財布のお金のことは「それはそれで別のこと」と思うようです。
これは
「同じ結果(損失)があるにも関わらず、フレームの状況によって、気持ちが変化してしまう」
ということを表していますね。
これが、フレーミング効果の働きなのです。
さて、ここまでは自分の中に作られるフレームでの効果をあげてきました。
しかし、このフレームは外界から与えられた情報からも作られてしまうのです。
そこで、次は、外からの情報で起こるフレーミング効果の例をご紹介しましょう。
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意図的に作られるフレーム
テーマ型フレームとエピソード型フレーム
僕たちは、情報をいろいろな形で受け取っています。
たとえば、話をしている相手がどんな気持ちかは、相手の表情から汲み取ったりしていますね。
- 「しかめっ面をしているから、相手は怒っているんだ」
- 「ニコニコしているから、相手は喜んでいる」
こんなふうに、情報を受けて次の行動を考えています。
そしてそれは、メディアが与える情報に対しても同じことが言えるのです。
たとえば、国の政策に市民団体が反対するニュースがありますね。
そんな時、メディアの報道は、切り口をどこにするか考えます。
国の主張と市民団体の主張を冷静に分析する報道をすれば、情報の受け手は、互いの意見の相違を冷静に理解します。
しかし、市民団体と警官隊がぶつかって、市民に死傷者が出た・・という報道をすると、受け手は国に怒りを感じ、市民団体に同情をします。
これは、報道の焦点の当て方によって、受け手の考え方が変わるということですね。
この場合
- 意見の対立に焦点を当てる報道を「テーマ型フレーム」
- 死傷者をに焦点を当てる報道を「エピソード型フレーム」
と呼びます。
メディアの例をもうひとつあげておきましょう。
メディア
昨今問題になっているものに「ゴミ屋敷」問題というものがあります。
これを報道する時
ゴミ屋敷の状態、ここから起こる火災などの問題の事実を報道するのが「テーマ型フレーム」、ゴミ屋敷で迷惑をしている人に焦点を当てて報道するのが「エピソード型フレーム」となります。
ここでのフレーミング効果は、メディアの情報によってもたらされた「あなたの行動や感情の動き」ということですね。
そして、このフレームを選ぶということは「視聴者になにを一番感じて欲しいか」を考える上で重要な作戦といえるでしょう。
それって、情報操作になるんじゃないの?なんて、声が聞こえてきそうです。
確かに、中には情報操作を悪用する人もいます。
でも、フレーミング効果があると知っているだけで、ひとつの情報を鵜呑みにする事を避けられるのではないでしょうか。
それに、科学は人のために研究されるものです。
実はこの「フレーミング効果」を、初めて提唱したのは行動経済学者でした。
これも立派な科学ですね。
行動経済学とは「人は損得だけで動かない、ではどうすると動くのか・・」そんなことを研究する学問です。
行動経済学では、人の行動を左右するフレームについて考えられました。
学問とか科学というと難しく思えますが、例題を見れば「あるある」も多いんですよ。
どんなフレームでどんなフレーミング効果が出るのか・・
そんな行動経済学から見る例題をご紹介しましょう。
行動経済学
言葉の表現は本当にたくさんあります。
結果は同じ事になっても、その表現方法で、受けるイメージが変わってしまうのですね。
いくつか例を上げてみます。
天気予報
「降水確率50%」と書く方が、「晴れの確率50%」と書くより、傘を持って出かける人は増えます。
これは、脳が本能的に「危険回避」する傾向にあるからです。
この「危険回避」がフレームになっているのですね。
人は天気予報を観る場合、雨の降る危険に注目しています。
このために、天気予報では「降水確率」をあげているのですね。
傘を持って出かけても降らなかった場合は許せても、傘なしで外出して降られた時はショックが大きくて、中には気象庁にクレームを言う人もいるかもしれませんから。
ダイエッター
ダイエット中の人がひき肉を買う場合を見てみましょう。
この時「赤身80%」と記したパックと「脂身20%」と記されたパックが並んでいると、「赤身80%」のパックの方が売れる傾向があります。
これは、ダイエットをしているために「お肉は赤身」というフレームがかかっているためです。
それで、「赤身」表示に注目してしまうことになります。
しかし、昨今では脂質では太らない・・なんて主張もあります。
食材を求める時はしっかり書いてあることを見て、選びたいものです。
電気代
一般的に、「一か月800円の節電」と「一年で9600円の節電」という宣伝文句では年間の節電の方に人は惹かれます。
これは電化製品などでよく見られるキャッチコピーですね。
ここでは節電というフレームがかかっているために節電の金額に注目がいきます。
大きい数字に魅力を感じてしまうのでしょう。
しかし、電化製品を選ぶ時は、耐用年数も考慮することを忘れないで下さい。
健康食品
「一本一か月分で3,000円」というサプリ。
宣伝文句で「一日たったの100円」というと購買意欲が上がります。
これは、購入商品の金額で支払うべきものです。
その「支払う金額」にフレームがかかった例ですね。
電気代の節電は、高ければ高いほど嬉しいものですがサプリひとつの値段は小さい方がいいもの。
悪く言えば「字面に惑わされる」ことになります。
100均
100円均一という売り方は、ある商店が始めた売り方のアイデアでした。
他の商店には、それぞれの商品にそれに応じた値段がついていますね。
そうしたお店では、値段と相談しながら買い物をしなければなりません。
これはある意味ストレスです。
しかし、そこにあるすべての商品が100円なら、そのストレスはありません。
また、衝動買いで高価な買い物をする危険もないですよね。
そこで、この売り方で人がたくさん集まって来たのです。
これは「すべての商品」というところにフレームがかかっているといえますね。
でも、100円だからと、買い物かごにぽいぽい商品を入れたとこありませんか?
レジで「8000円になります」なんて言われて、ヤバイと思った人も多いのでは・・
ワンコイン
「この商品500円」と書かれているより「この商品ワンコイン」と書かれている方についつい注目してしまいます。
ワンという文字は、目に飛び込んだ時点では数字ではありません。
でも「ひとつ」ということは理解できます。
商品を購入する時は「数字の小さい方」を選ぶというフレームがかかります。
そうして、気軽に出せる金額という印象を持ってしまうのです。
これは気をつけたいところですね。
保険
「一日300円で生涯補償」。
生命保険では、こうした謳い文句をよく耳にします。
これを「10年間100万円で生涯補償」としたらどうでしょう。
「ちょっと払えそうにないわー」と、なるのではないでしょうか
しかし、保険も商品の購入なので、金額の大小にフレームがかかります。
それで「一日」当たりの金額に注目してしまうのですね。
ですが保険は払う期間の長い商品。
検討する時は、変なフレームがかかっていないかどうか、よく見極めて下さいね。
果汁飲料
スーパーで売られている果汁飲料には「果汁50%」と記されたりしています。
まちがっても「水50%」とは記されていませんね。
そんなふうに記されていたらきっと売り上げは落ちるでしょう。
その果汁の割合がたとえ1%でも、ちゃんと「果汁1%」と書かれています。
「水99%」などと記されていたら、誰も買わないでしょう。
「『果汁100%』は高くて買えないけど、確かに果汁を買ったんだ」
そういう気持ちにさせる効果が「果汁」というフレームにはあるようです。
たくさんの例を見てきましたが、これまでに気が付いたことがあるのではないでしょうか。
それは「行動経済学」という言葉が示していましたね。
そう、これはビジネスに応用できるのです。
「何かを宣伝したい。みんなに広めたいものがある・・」
そんな時にこそ、このフレーミング効果を使わない手はありません。
そこで、どのようにこの効果を使うのがいいのかを次にお伝えしたいと思います。
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フレーミング効果のマーケティング応用例
マーケティングでは、いかに集客をするかが問題になるのではないでしょうか。
上の例でもビジネスで使われている表現方法がいくつもありましたね。
しかし、ここでもっとフレーミング効果が役立つ場面があることをご紹介しましょう。
上の例で気付かれた人もいるかもしれませんが、フレーミング効果は「人は表現によって、行動が左右される」というだけではありません。
「人は比較の表現によって、行動が左右される」ということもあるのです。
「成功と失敗」や「雨と晴れ」、あるいは「赤身と脂身」など・・
上記でも、比較によって行動を決めているところがありましたね。
そこで、マーケティングに応用するには、この「比較のフレームを際立たせる方法」を使います。
こちらも例をあげてご紹介しますね。
お得感というフレーム
そのラーメン屋さんでは大盛りを売りにしたいと思っていました。
メニューは
- 並盛 500円
- 大盛 700円
でした。
しかし、これだけでは大盛は思うように売れなかったのです。
そこで大将はメニューをもうひとつ加え、
- 並盛 500円
- 大盛 700円
- 超大盛1000円
としたのです。
すると大盛ラーメンの注文が増えたのです。
量が多くて、安いイメージが「大盛ラーメン」についたのですね。
これが比較を使った表現方法のひとつになります。
売り上げを伸ばす時に、この方法は効果的です。
コース料理も2種類ではなく3種類作ると、真ん中のコースに人気が出ます。
フレーミング効果では、人は損より益を選ぶように動くのです。
そして、それは「損をしたくない!」という感情を生み出します。
そこで、大盛りが食べきれない量でも注文してしまう人が出てくるのでしょう。
さらに、同じようにあるのが「食べ放題」という言葉です。
食べ放題は「いくら食べてもいい」というお得感が絶大のものです。
たとえば「3,000円で食べ放題」というと「ディナーになら行こうかな」とか「誕生日や記念日に行こうかな」・・なんて思いますね。
しかし、実際に食べられる量は3000円に満たないかもしれません。
おなかに入る量は決まっていますからね。
それでも、言葉の持つ「お得感」で人は「食べ放題」に集まるのです。
これは、先の例の「100均」と同じ効果といえるでしょう。
こうした「お得感」を出せるのは金額だけではありません。
旅行の広告などでは、距離を時間にして表示しているものがありますね。
その場合
Ⓐ東京から車で1時間半
Ⓑ東京から車で90分
どちらが早く感じるでしょうか?
Ⓑの「車で90分」の方が早そうに思えますね。
また、映画のDVDなどは120分とか160分など、上映時間が分数で書かれています。
これは、長い映画だと疲れてしまうという気持ちを軽くするためではないでしょうか。
さらに、かつてCMでこんなふうに叫んでいたものがありました。
「タウリン1000㎎!」
これはどこのドリンクでもそうですが、単位はmgで成分が書いてあります。
ゼロがたくさん並んでいた方が、たくさんに思えますからね。
これもお得感を出している技といってもいいでしょう。
そしてさらに、集客の方法としては「わかりやすさ」を伝えるものがあります。
わかりやすいポジティブな言葉のフレーム
野球のシーズンが終わりに近づくと、セールを期待する人が増えてきます。
その年に優勝したチームの地元では
「優勝おめでとうセール」などと銘打ってセールがおこなわれるのが恒例となってきたからです。
しかし、辛くも優勝を逃した、2位3位に甘んじてしまった、なーんて時も、スーパーでは用意した商品をさばかなければなりません。
そこで
「感動をありがとうセール」という言葉にかえてチラシを作ったり、店内を飾ったりします。
これは「このお店はチームを応援しているんだな」という好感も与えてくれるでしょう。
こうしたポジティブな言葉は客足をこちらに向かわせる力があるのですね。
特売日を設定する
- 毎月5のつく日は5%引きデー
- 毎週土曜はプライスダウンの日
なんていうスーパーはよくありますね。
これは、他の日との差別化をしたものです。
これは「他の日より安いんだ」と簡単に比較ができますよね。
そこで、主婦たちは「5」のつく日や土曜にお買い物をするようになります。
さらに「売り尽くし閉店セール」などと張り紙があると、これは行かなきゃ損と思ってしまいますよね。
でも、中には何年たっても「閉店セール」のまま・・
なんてお店がたまにあって、ガクッとくることがあります(^^;)
広告ではこうした方法が多く取られますが、営業マンはどうしているのでしょうか。
営業マンはトーク術に、こんなふうにフレーミング効果を使っているのです。
言葉の言い換え
ビジネシーンでは、「いかにお客さんに財布のひもをゆるめてもらうか」も重要ですね。
営業では、それが営業マンの腕にかかっています。
そんな時にフレーミング効果を狙って使いたい言葉があります。
「出費」と「費用」
お客さんが「ここのリフォームにはどのくらい出費しなければならないか」と聞いてきたとします。
そんな時は「リフォーム費用としてはこのくらいです」と、「出費」を「費用」に言い換えます。
出費はしたくないものでも、費用だと出さなければならないものだと考えるのです。
すると、同じ「お金を払う」でも、気持ちは軽くなるものです。
さらに、これを「投資になる」と言い換えることで、ますます顧客の気持ちは軽くなります。
「きれいな家、強い家にすることで家族が守られるので、リフォームは家族の安心への投資になります」
と、言われたら、あなたもリフォームする気になりませんか?
さて、いろいろな場所で役立つフレーミング効果ですが、同じような効果を持つ心理傾向は、心理学や経済学にたくさん存在します。
それをご紹介することで、フレーミング効果と比較してもらい、さらに理解を深めてもらいたいと思います。
心理学好きなら、覚えておいて損はしませんよ。
フレーミング効果とプロスペクト理論の違いは?
まずはプロスペクト理論の解説からしましょう。
プロスペクト理論とは
「理論」なんてついているとまた、難しく感じてしまいますね。
でも、大丈夫。
簡単な話です。
解説してきますね。
先ほど「損はしませんよ」と言いましたね。
実は、この「損」が、プロスペクト理論のカギになっているのです。
生きものが最も恐れることは「命を失くすこと」。
そこで、生きものは「命の危険」に敏感になりました。
そして、やがて生きものの脳は「危険回避」の傾向で思考するようになったのです。
この危険回避の思考は、社会的な人間においては「損失の回避」と言い換えることができます。
つまり、人は誰でも「損はしたくない」と思っている、ということです。
その気持ちがどんな時にどう表れるのかを実験した研究者がいました。
またまた例題でご説明しますが、これは実際に行われた「プロスペクト理論の実験」をわかりやすく言い換えたものです。
ここに100万円あります。
以下のどちらかの方法を選択してください。
Ⓐジャンケンをしてあなたが勝ったら100万円もらえますが、負けたら1円ももらえません。
Ⓑジャンケンをしないなら、確実に50万円をもらえます。
こんな場合、あなたはどちらを選ぶでしょうか?
こんな時、人は「1円も貰えない場合があること」に注目します。
そこで、金額がたとえ減っても、必ずもらえる方を選択するのです。
と、いうことで大半の人はⒷを選択します。
さらに、例題です。
あなたに100万円の借金があるとします。
以下のどちらかの方法を選択してください。
Ⓐジャンケンをして、あなたが勝ったら借金はゼロになりますが、負ければ借金はそのままです。
Ⓑジャンケンをしないなら借金は半分の50万円にします。
この場合になると、Ⓐを選択する人が大半になってしまうのです。
これは、もともとあった損失が「ゼロになること」に注目するからだと考えられます。
このように、人には「利益は少額でも確実に、しかしリスクには全面回避を望む」という傾向があることがわかりました。
それが「プロスペクト理論」と名付けられたのです。
そしてまた、このプロスペクト理論も、ビジネスで活用されているのです。
プロスペクト理論の活用例
実は、プロスペクト理論もフレーミング効果同様、ビジネスで使われています。
あなたの周りで、こんなキャッチコピーを見聞きしたことがあるでしょう。
- 「1週間使っても、効果がなければ全額返金」
サプリや健康器具などの販売に使われていますね。
これは、「全額」ということで、損失がゼロという印象を与えているのです。 - 「3000円以上で送料無料」
無料ということは、損失がないことです。
このコピーは惑わされる人、続出ですね。
この例を見て「おや?」と思った人もいるでしょう。
フレーミング効果のキャッチコピーに似ていませんか?
そこで、この2つの関係を分析してみましょう。
フレーミング効果との関係
上の例題はどちらもフレーミング効果が発揮されています。
どちらの例題も「支払わなくてよい」ことがフレームになっています。
ここで購買意欲がそそられることが「フレーミング効果」ということですね。
このことから導かれることこととして
「プロスペクト理論はフレーミング効果を強化する作用がある」
と、考えることができます。
つまり「違い」というよりは、「近い作用」と言った方がいいかもしれませんね。
そして最後にもうひとつ、フレーミング効果と似た名前の効果「リフレーミング効果」をご紹介します。
これも覚えておくと、人生に活かせる効果です。
リフレーミング効果とは
フレーミング効果とリフレーミング効果の字づらだけを見比べてみると、「リ」があるかないかですね。
とすると、この2つも関係が深いように思われます。
今までの説明で、フレーミングという言葉は、いわゆる「枠」をはめることでした。
そして、リフレーミングという言葉は、それに対する言葉になります。
つまり、はまっている「枠」をはずすという意味です。
なので、リフレーミング効果は「枠」に囚われている考えから「枠」をはずして自由に考えられるようにする効果ということになります。
もし、家の窓枠を取り外すことができたら、今まで窓の大きさしか見えなかった世界も視野いっぱいに見渡すことができるようになりますね。
そして、この視野が広がるということは、考え方が自由になるということです。
それは、ネガティブな気持ちをポジティブに変えることができる、とも言えます。
それでは、どのようなシーンでどんなふうに使えるのか、一例をご紹介しましょう。
リフレーミング効果の活用例
リフレーミング効果では、人の思い込みを失くすことで、視野を広げることができます。
そこで、視野の狭くなる場合を想定して見ました。
リストラされた
これは気持ちが沈む出来事ですね。
なぜ気持ちが沈むのかというと「生活手段がなくなった」というよりは「会社から不要と言われた」
という気持ちが強いからではないでしょうか。
これは「会社から不要になった」というネガティブなフレームです。
ここにリフレーミング効果を取り入れた考え方をすると
「新しいことに挑戦するチャンスが与えられた」と、こうなります。
リストラされた時、泣いても笑っても、時間は変わりなく進んでいきます。
思い込み次第で、その後の時間の使い方が違ってくるといっても過言ではありません。
ダイエットに失敗した
ここで気落ちした時のリフレーミングとして
- 効果のないダイエット法がひとつわかった。
- 新しいダイエット法を試す機会ができた。
などと思うことでポジティブにやり直すことができますね。
では、これはビジネスには使えないのでしょうか。
過去の例にはこんなものがありました。
工場での失敗作
接着剤工場で、接着効果のとても低い接着剤ができてしまいました。
ここでのフレームは「接着剤は物と物をしっかりつけるもの」でしたが、これが取り払われたのです。
そして、その結果、このすぐ剥がれてしまう接着剤はやがて「ふせん」というものを生み出すことになったということです。
つまり、リフレーミング効果は、物事を一面で見ることなく、多面的に見るようにする効果ということですね。
ここまでくると、フレーミング効果とリフレーミング効果の違いがかなりわかってきたのではないでしょうか。
では、整理してみますね。
改めて、フレーミング効果との違いは?
これは、つまるところ「枠」があるかないか、ということになります。
フレーミング効果は、言葉や表現を「枠」に入れることで際立たせます。
一方、リフレーミング効果は、言葉や表現の「枠」を取り払うことで、広い視野をもたらします。
こうした、意味づけになるでしょう。
これをたとえ話で説明してみますね。
- 「フレーミング効果」は、蛙が井戸の中で世界を感じていること。
- 「リフレーミング効果」はその蛙を井戸の外に出してやることで蛙の世界が広がること。
フレーミング効果の存在を知ることはこうした井戸の中にいることを気付かせてくれる効果なのかもしれませんね。
フレーミング効果の解説はこれで終わります。
今回は結局、3つの心理効果のご紹介ともなりましたが、理解は深まったでしょうか。
長くなりましたので、ここでこれまでのまとめをしておきますね。
まとめ
今回は、日常にもあふれているフレーミング効果について解説してきました。
フレーミング効果とは
- 内容が同じでも、見せ方や表現を変えることで印象が変わる心理作用のこと
フレーミング効果の例
- 心理学・・映画観賞券・手術
- メディア・・テーマ型フレーム・エピソード型フレーム
- 行動経済学・・天気予報・ダイエット・電気代・健康食品・100均・ワンコイン・保険・果汁飲料
マーケティングへの応用
- お得感を出す
- 分かりやすい表現
- 言葉の言い換え
- フレーミング効果とプロスペクト理論の違い
- プロスペクト理論とは、利益を追求するよりリスクを回避することを求める心理
- プロスペクト理論の活用例・・全額返金・送料無料
- プロスペクト理論はフレーミング効果を強化することができる
リフレーミング効果との違い
- フレーミング効果は枠にはめて表現を強調する
- リフレーミング効果は枠を外して表現を広げる
- リフレーミング効果の活用例・・リストラ・ダイエットの失敗・接着剤の失敗作
フレーミング効果はビジネスを展開する時に活用できるとご紹介してきましたね。
でも消費者としても、これは十分活かすことができます。
それは、「フレーミング効果」や「プロスペクト理論」が、消費者の弱点にもなっているからです。
これを知ることで、キャッチコピーだけを鵜呑みにしないという気持ちが生まれるのではないでしょうか。
あなたも「3,000以上で無料」のうたい文句に冷静さを失い、必要のないものまで買ってしまった・・
こんな経験があるのは僕だけではないはず(・・と思いたい(^^;)
人の心理は本当に奥が深いと思います。
これらの心理効果をうまく使って、どうぞあなたのビジネスや人生に大いに役立てて下さいね。
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